“脱ホームレス!!”~住所不定でも成る~
第55回『ネクストライングループ』桜木町ド淫乱ンド 店舗責任者/高野友輔(25歳)入社1年2ヶ月
1通の住民票で再起!
――370円……現在の日本で、この金額でできることは限られている。それでも、『桜木町ド淫乱ンド』の店舗運営者でお客さんやキャストさんからは”DT”の愛称で親しまれている高野友輔さんにとって、それが全財産だった。もちろん、昔のことではない。某店の牛丼の並盛でさえ380円の約1年前のことである。
「まぁ、けっこうな額の借金があったんですよ、当時。母親が亡くなりまして。うちは母子家庭だったので、母親の面倒を見ていると仕事もままならなくなって……半ば介護離職みたいになって。お金が無くなってですね、その結果、借金を抱えました。それで、その時は市営住宅に住んでいたのですが、母親の葬式も終わって落ち着きを取り戻したのを見計らったかのように市の職員がやって来て家賃の支払いを命じるわけです。当然のことですけど、僕は払えなくて……」
――その結果、高野さんは家を追い出された。その前に電気、ガス、水道という順番で止められたので、ある程度の覚悟はしていたというが、24歳という年齢で、いわゆるホームレスという存在になった。
「ホームレスといっても、友人の家を転々としていたので雨風は凌げたんですけどね(笑)。もちろん、職も探しましたよ。だけど、当然のことながらケータイも止められていまして。これでは電話を持っていないと同じですよね。それでいて、住所も無いとなれば、どこの職場も雇ってはくれないですよ。正直なことをいえば、自分は野垂れ死にするんだな~って思っていました、心のどこかで。そもそも電話をかけられないということは、面接のアポを取る事すら難しいわけです(笑)。唯一の手段はコンビニに行って無料Wi-Fiでスマホをつないでメールでやり取りするしかないんです」
――何度も書くが、このご時世にである。しかし、一銭も持っていない高野さんにとっては、そうするしかなかった。持っていないも同然なケータイは彼を世間から突き放した。そして、彼を救ったのもケータイだった。
「Wi-FiをつないでLINEは使えるじゃないですか? そうしたら、僕の窮地を知った先輩から、”知り合いの会社が新店舗をオープンしてスタッフが足りないから……”と連絡があって、面接をセッティングしてくださったんです。LINE様さまですね(笑)。それが今の会社、ネクストライングループが西川口で営業している店舗でした。この時、僕はピンと来ました。店舗型の店だったら、そこに寝泊まりができるんじゃないかと。まだ、受かった以前に面接すら受けていないのにです(笑)。しかし、困ったことに当時住んでいた所から西川口までの交通費も無くてですね(苦笑)。知り合いにお金を借りて西川口まで来たんですけど、その時、手元に残っていたのは500円硬貨1枚で。面接まで時間があったので缶コーヒーを買って、それが『全財産370円伝説』です、ガハハッ(笑)」
――ちなみに、この話にはさらなるオチがある。それは「結局、その交通費も借金してのもので、370円どころじゃなくて、マイナスじゃないかと指摘されました(笑)」という。もちろん、今だから笑って話せるエピソードだ。しかし、高野さんにとっては面接を受けることすらも首の皮一枚の攻防であり、リアルに”紙一枚の攻防”があった。
「市営住宅を撤去させられたということで、住所不定になるわけです。それが予想されていたので、家があった時に住民票を取っていたんです、3枚。会社によっては面接時に必要ですし、就職先が決まっても必要じゃないですか? 今の会社の面接の前に2枚、使っていまして、最後の1枚だったんですね。ですから、自分はこの面接に賭けるしかなかったんです。そもそも落ちたら、地元に帰るお金も無かったですから(笑)」
――何でもやる。トイレ掃除だけでもいいから置いてほしい……そんな必死のアピールの結果、高野さんは無事に合格。こうして、スタッフとしてオープニングの店舗でキャリアをスタートさせた。約1年前のことである。最初は基本的には店内掃除、お客様へのドリンク出しといった雑務が多かった。金無し・家無しの状態であったが、住まいは会社が寮を用意してくれた。初任給も「30万円でしたね。いの一番で西川口までの交通費を貸してくださった方に返しました(笑)」と言う。その後、高野さんの働きは着実に評価をされ、立場もアップしていった。
「実は業界に関しては、今の会社が初めてではないんですね。20歳の時に地元で経験しています。その時はお金が必要でした。今では全快しているのですが、妹が手術をすることになって、その入院費が必要で。先ほども申しましたが、うちは母子家庭だったので僕が働くしかないなと。そうなると、給与面でこの業界が一番、適していました。やはり、20歳でしたからね、入院費も必要ですが、自分も遊びたいですからね、ガハハッ!(笑)」
本当にヤル気次第!
――母親のことといい、妹のことといい、明るく笑って語るには、あまりにも壮絶過ぎる。だけど、「今が充実しているから」と、とびきりの笑顔で話す姿はナチュラルであり、人としての強さ、優しさを感じずにはいられない。そして、周囲からも信頼、愛されているのだろうと思う。だからこそ、高野さんはステップアップを繰り返し、入社1年で店舗責任者を任されるようになったのだろう。この記録はネクストライングループでは最速になる。
「本当にありがたいです。だから毎日が楽しいです。この会社は男性スタッフも女性のキャストさんも、やる気があれば、そして前向きだったら通用する会社です。だって、ボクはそれしかないですもん(笑)。今は……基本給で50万円。そこに大入り手当てなどが付くと80万円は下らないです。もちろん、繁忙期には3ケタもいきます。そして、実勤8時間です。休憩はシッカリと取っていただきます。この業界ではなぁなぁになってしまいがちなことがクリアです。今は……1年ちょっと前までは財布に370円しか入っていなかったことを考えると、家に帰って電気が点くだけ幸せですし、我々の生活を支えてくださるのはキャストさんですから、感謝しかありません。本当にこの会社に入ってからは楽しさしかないです。辛かったことは一切ありません! あ、でも、スタッフがやむを得ぬ事情で退社したり、キャストさんが卒業していく別れは辛いですね。でも、それが前向きなものだったら嬉しさもありますけどね!」
――このような考え方だからこそ、彼が愛される理由が分かる。ちなみに、高野さんはお店のキャストさんからは「DTさん」と慕われている。「”DT”は童貞だからですよ。いや、本当ですよ、マジ童貞です(笑)。童貞でこの業界にいるのはレアケースかもしれないですね~」と笑う高野さんであるが、もちろん、お客として業界を利用したこともないという。実はだからこその目標もある。
「今、店舗責任者を務めているお店を童貞でも利用しやすいお店にしたいんです。弊社はお店のカラーは確固たるコンセプトがありますので根本的なものは変えることはしません。だけど、イベントとかで自分の考えを具体化できますし、やってみたいことはチャレンジできる。そこに業界の経験・未経験は関係ないです。自分の色を出せることが弊社の良いところですね!」
――高野さん自身が心掛けていることは「アミューズメントパークのような接客」だという。それは、詳しい内容はここでは端折るがお店のコンセプトが”大人のアミューズメントパーク”ということもあり、「ある意味ではゲームセンターや遊園地で働いている感じです(笑)」と高野さんは笑う。それは、「お客様に喜んでいただきたい」という気持ちが第一であると実感しているからだ。最後に高野さんが、これから一緒に働きたい人物像を聞いてみた。
「会社としては、ズバリ、素直な方です。素直であるということは、経験・未経験問わず、グループの方針ややり方を受け入れ実践することができる。そして、入社した時は全員が先輩ですから、その教えを学んで実践することができるということに繋がると思っていますから。たとえ未経験で即戦力にならなくても、その人の過去の経験と素直さも弊社の教育があれば、とても大きな戦力になることは間違いないですから。僕自身としては野心がある人と一緒に働きたいですね! 今がチャンスですし、会社は小さいことでも見ていてくれて、それが良いことであれば評価に繋がります!」
――母親を失い、財産も無くなる……そんなドン底からでも這いあがって、無一文から月収80万円以上になった高野友輔さん。今回、取材をしていて彼の口から出てくるのは前向きなものだけでした。そんな高野さんと一緒に働くと言うことは、いろいろなことが学べることでしょう。経験の有無は関係なく、チャンスだと思います!
風俗ライタ―集団F.M.W(風俗マニアライタ―ズ)の一員。キャリアは24年。千葉県生まれM○感育ちを自負しているが、ヒップホップよりもメタル派。酒と痴女の誘惑には、めっぽう弱い。